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岩手県盛岡市にて講演

老人福祉施設研究会さま講演

同じ人は2人と居ません。現場は課題が山積みです。その中には、初めて向き合う内容も出て来ます。だから、「挑まないと、その方と出逢った意味がない。」と、私は思っていて、頭をフル回転させて、毎回悩み、行動に変えます。なにに悩むかというと、

孫が看取ったおばあちゃん。

認知症の奥さまが看取った旦那さん。

近所の人たちがお世話した看取り。

子が親を、

親が子を、

姪が叔父を、

甥が叔母を。

医療、介護職、葬儀社の皆さんからの引き継ぎと、お一人で亡くなられていての発見後に警察の皆さんにお世話になってからの引き継ぎと、死因・状態も様々なことからのスタート。

その背景とこれまでを伺ったとき、ここのお家が「求める形」って何だろう。と、悩むわけです。

私が持つ「ながれ」で、良いのだろうか。いや、違うかもしれない。それでなくてもミッションが沢山ある中で、しかも時間は限られていて、何れ終わればお別れの時間は又、来るのです。どのくらい満足してもらえるのか、どのくらい故人に夢中になっていただけるのか。いっ時でも、死を怖い存在から遠のけて過ごしていただく時間。

死という存在は避けられないから、その時間を見つめ、生きて来た時間に出会い直していただけるように。

現場の評価は、決して甘くはありません。理想の通りには、いかない。それが、現場の怖さです。評価は遺された方がします。すり合わせが甘ければ、当たり前ですが、当然信頼はされません。

けれどもその一つ一つを丁寧に、微に入り細に入り進めることができれば、信頼関係を深く持て、遺された方が故人と過ごす貴重な時間の中で、私たちにとっても出逢ったことのない素晴らしい時間が訪れます。

それは、亡くなられた方が、遺された一人ひとりと過ごして来た、生きておられた時に真剣に向き合って愛情を注ぎ、大事にして来た時間が、今の時間を包み込んでいるという、素晴らしい時間に出逢える。

そして、この時間を迎えるまで多くの人たちが関わってくださった今という時間であることは、言うまでもありません。

というお話しを、させていただきました。職種問わず、共通していることはあると思います。

帰り際声を掛けてくださった、被災地の高齢者福祉施設の施設長さんが言いました。

「笹原さんの活動をずっと見て来たから、みんなに知ってもらいたかった。どのような亡くなり方をしても、亡くなった人たちが、ずっと誰かの中に生きていて欲しいと、その一心でみんなで希望して、笹原さんに来てもらいたかったんです。過去と今から、未来に向けてみんなで社会問題に取り組むため、益々意識を高く持ってもらいたかったから。良かった、みんなそれぞれ立ち位置は違っても、うーん、うーんって唸(うな)りながら、号泣して聞き入っていたから。私もね、涙を拭くのはハンカチではなく、タオルを持って来るべきだった!」

皆さんの経験の代弁者として選んでいただいたこと、身が引き締まる思いでした。お役に立てたかは分かりませんが、私も益々、研鑚して参りたいと思います。

おまけ〜1
84歳の父と同居している私に皆さんは、「お年寄りと暮らすの、偉いですね。」と言いますが、「いやいや、父の方がよっぽど偉いと思います。同居して12年、色んなことが沢山あったけど、本当に支えてもらいました。しかも、私より遥かに記憶力が良いし、知恵もある。少し教えて欲しいんだけどと私が頼むと、孫を亡くしたおじいちゃんの気持ちを、ゴーゴー泣きながら教えてもらって、翌日の納棺に挑ませてもらったりと、良き相談相手です。」と、答えます。先日、じいちゃんはこんなことを言っていました。

「こんなに働く84歳は居ないと思ってたけど(自分のこと)、俺より10以上も年上で、もっと働いてる人に会ったんだ!上には、上が居るんだな〜!ほ〜〜!!」と言っていました。というくらい、家の中では、よく働いてくれます。助かってます。

おまけ〜2
研究大会の幹部で、宣承さん(お寺の住職であり、高齢者福祉施設の苑長。おもかげ復元師の震災絵日記(ポプラ社)のあとがきを書いてくださいました。)が居られました。先日、別件で対談させていただいた方の話しを聞いていただいたら、宣承さんも過日に別件で対談されていたそうで、「おー!」という話になり、色々なお話しをさせていただきました。その方は写真家の方ですが、

「私、ひ孫さんがひいおばあちゃんを看取った写真を見せてもらって、もし私が納棺を担当させていただいたとしたら、とても難しい納棺だなぁって、正直思いました。

何故って、看取りという状況の中で、少しずつお話しが出来なくなったひいおばあちゃんの覚悟みたいなものを写真から感じて、きっと、ひいおばあちゃんは〝いのち〟をひ孫さんに、最後の力を振り絞って伝えたと思うので、そのことを台無しにしない納棺のながれを、考え込んでしまいました。

この子は、ひいおばあちゃんとどのような時間を過ごしたのだろう。

ひいおばあちゃんは、どんな思いで、ひ孫さんを、守り続けようとしたのだろう。

私は、どんなお手伝いが出来るのだろう。写真ではあるけれど出会えたことで、ひいおばあちゃんとひ孫さんから、悩み方を色々教わりました。」

数年前に国が法改定してから、地域の動きが盛んになっています。日本の昔の看取りを取り戻す、という強い意識と動きがあります。納棺も、もっと原点回帰する。お看取り後のお手当ての意味も、深くなっていく時代に入ったことを、現場からも実感しています。様々な業界誌様からの原稿依頼も増えているので、弊社、参加型納棺の中から、その方法と意味をお伝えしています。

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