6.32017
大正大学鴨台会群馬県支部様講演
仏教には多くの教えがありますが、四つの教えが集結し、大正15年に設立された歴史ある学びの大学です。その同窓生を中心としたこの度のお集まりでした。東日本大震災と全国各地で発生した災害の追悼供養の後の講演に、お声掛けいただきました。
毎回、僧侶の皆さんへ向けての講演の時には、普段、僧侶の皆様もご遺族から深い相談を受けておられていること、歴史の中にある死者に関わるお勉強を常にされていること含め、普段はお話しないような内容を現場から提議したり、様々なお話しを組み込み、お伝えしています。
私の仕事が御遺体が中心となる、死の専門職なので、いつもご遺族とお話しをするとき、亡くなられた方が中心の内容で、自然にお話しが進みます。その内容とは遺されたご家族にとってはただ、最愛の人の話しをしてくださっているのだと思っています。
今回も、ご遺族が体験されたお話しや実際に現場の中に存在していることなどを組み込みました。講演終了後のこと。次々とご住職に声を掛けていただきました。
「今日のお話し、聞けて良かった。」
講演でお話しした内容は、現場で出会う、本当に素直なご遺族のお気持ちでした。講演の後には、ご住職の皆さまの、色々なお話しを教えていただきました。その中で、とても印象に残ったお話しを一つ。
「若くして亡くなった女性がいました。その方の葬儀が終わり、納骨を終えて数日経ったとき・・・。その方のご主人が、「住職!住職!」と墓場の方から走って来たんです。
「どうした?」と、私が聞くと、
「妻が、妻が居る!」ご主人が、そう言うので言われた通りに、墓の所に行った訳です。そうか、そう言う意味か。私は墓石を見て、その意味が分かりました。
納骨したばかりの墓石に、髪の長い女の人の顔が浮き出ていました。間違いなく、奥さんの顔でした。私もね、色んな経験はするけれど、今回の経験は初めてだったのです。私はご主人に言いました。
「確かに、あなたの奥さんだね。小さな子どもたちを遺して逝くのは、母としてさぞかし心配だったのだろうね。最愛の旦那さんに託し、よろしく頼むと伝えているのでしょうね。納得出来たら、墓からこの姿は消えるでしょうから、この姿が消えるまでね、私(ご住職)とあなた(ご主人)で手を合わせましょう。」
私は時間を見付けては、墓に行きお経を上げ、浮き出ている若い母の、その姿の頭を撫でて話し掛けました。ご主人もね、子どもさんたちを連れて、随分通ってくれました。2年の月日が流れ、その姿は突然消えました。涙が出ましたよ。
人はこのようなことを不思議な体験と、呼ぶでしょう。でも、家族にしてみればね、家族の出来事なんです。最愛の夫と、小さな子どもさんたちを遺して逝く母の気持ちを思えば、寺として母と、その家族の気持ちを支えていくこと。これは、これからも変わりません。
ご住職のお話しを伺いながら、様々な現場を思い出していました。
僧侶の皆様を対象とした講演のとき、お寺さんがこれまでお勉強されて来られたことなども、教えていただきます。それがすごく、深い学びになります。お天道様がくれた、貴重な時間だと思っています。お会いしたお寺の奥様方の包容力も、人並みではありません。ステキな方ばかり。
ステキな方と言えば講演の後、
テノールアーティスト志村一繁氏、
ソプラノアーティスト志村美土里氏、
ピアニスト小林直子氏
のコンサートがありました。会場は、プロの迫力ある歌の中、ステキな雰囲気に包まれていました。高齢の皆さんが笑顔で歌い、ノリノリで、歌の世界の中に入り込んだ皆さんの姿に見惚れていました。
私はと言うと、プロの迫力に圧倒されそのまま歌の世界へ突入。心が解放されたような気持ちになって、潜在意識に触れる歌声に号泣していました。会場の1人として、そのステージを楽しんで、瞼は腫れたけど(笑)心はスッキリ!歌ってすごいなぁって、又思っていました。
コンサートの中で、たくさんの歌が紹介されました。紹介された歌の中で特に一つの歌が、心に残っています。志村さんご夫妻も、大切にされている歌なのだそうです。
それは、福島県南相馬市立小高中学校の、小田美樹先生が生徒のために作った歌でした。一人、また一人転校していく子どもたち。離れ離れになった友達を思って、子どもたちがつぶやいていた言葉を拾い、先生が卒業式のために作った歌なのだそうです。
歌を聴きながら、私も震災当時を思い出していました。「転校したくない。」と、泣いて町を出ていく子どもたちが、沢山いたことを。全国各地の学校さんにいのちの授業に伺うと、被災地から転校して来た子どもたちに、「いつか故郷に帰りたい」と言われることもあります。これまでは、色々話した後に「みんな待ってるからね。」と答えて来ました。
小田美樹先生の歌は、震災でこうした経験をした子どもたちを、つないでくれる歌なのだと思います。
小田美樹先生の歌も、誰も責めていないということ。それがやっぱりすごいことなのだと思います。ただ、子どもたちのありのままの素直な気持ちを、先生が道を付けてみんなで歩けるように、みんながつながっていることを伝えてくれながら、まとめてくれていること。
この歌を志村さんご夫妻の歌で、聴かせてもらって号泣。小田美樹先生の気持ちが伝わって来て、号泣。子どもたちの悲しみを、一手に引き受けようとする覚悟が伝わって来ました。歌って、すごい。
「群青(ぐんじょう)」はYouTubeで聴くことが出来ます。ティッシュかハンカチを用意してから、どうぞお聴きください。
群馬県から岩手県へ戻り、新幹線を降りて真っ直ぐ、白骨化されて見付かった方の復元へ走りました。