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「東北管区広域緊急援助隊北部三県合同訓練」

平素より大変お世話になっております法医学の教授からお声掛けをいただき、岩手県警察本部からの参加依頼の正式文書をいただいて、

「東北管区広域緊急援助隊北部三県合同訓練」という、大規模災害訓練に18日、19日の二日間、参加させていただきました。

岩手県警察本部、秋田県警察本部、青森県警察本部、海上保安庁、岩手県消防本部、警察庁、県庁、

岩手県、福島県、新潟県、その他2県から法医学教授、法医学教室からDr.と助手の皆さん、歯科医師会からたくさんの歯科医の先生方々、参加者150名強の合同訓練が行われました。

法医学の世界は、テレビドラマなどでも取り上げられるようになったので、ご存知の方も多いかと思います。医学・科学に基づいて調査をする専門医(医師)で、法律的に重要な事実関係の鑑定・解釈等をする学問です。

例えば、血液型や指紋による個人識別という、その人がその人であるという証明と(そうじゃないとその方は、お家に帰れない)、親子鑑定、

死因(遺族の立場からも、これからを決めるためにとても重要)・死後時間の推定を行う、そして、犯罪医学。法医学のDr.は警察とチームで動くことが多くあります。

法医学の先生方と刑事さん方々からの引き継ぎ時には、いつもその観察力と感情に流されない平等さに(でも、普段は情に深い)、いつも、プロの凄さを感じています。

今回の大規模災害訓練では、法医学教授の御配慮で、私は主に検視の訓練エリアに居ました。法医学教授の医師の先生方々と歯科医師の先生方々、各県の検視官など公安の皆さんが安置所訓練検視エリアの中で、大きな建物の中に80名強の皆さんが居られて、検視に於いてレントゲンなど含め、様々な種類の検案訓練が行われていました。

報道もたくさん入られていましたが警察本部で、検視エリアは立入禁止だったそうで、主にニュースでは捜索訓練、救助訓練が報道されていました。

東日本大震災の警察管轄の安置所の中のことは、警察管轄なので私も詳しくお伝えしたことがありませんが、

確実に言えることは、災害時などに於いて警察管轄の安置所には法医学者の専門医(医師)が居てくださること、普段から法医学のDr.の指導で知識と技能の強化訓練を受けている、検視官と呼ばれる警察官や検視の専門のお勉強をされた刑事さん方々が居てくださること。緊迫した雰囲気の中で、遺体からの情報を収集し、検査などを行い、亡くなられた方の人権を守ってくださっていること、感染管理も確実に行われていて、プロの人たちが行う訓練内容のレベルの高さ。そういう意味でも遺体が守られていることは、総合的に家族を守っているので、高度な訓練の内容であったことは、お伝え出来ることだと思います。

東日本大震災に於いても、安置所は断水と停電がありました。今回の訓練に於いても、断水と停電という想定からのスタートでした。震災当時は時々、余震という大きな揺れが何度も発生していました。警察管轄の安置所の中に居るときに地震があると、警察官の指示で何度も避難したのを思い出していました。

現在私は、全国各地に講演にお声掛けをいただき、可能な限り回らせていただいていますが、年齢や職種問わず、皆さんの防災意識がとても高いことを強く感じています。

「安置所はどうなっていたのですか?」と聞かれることもとても増えています。興味本位で聞かれればお答えはしませんが、防災意識を高めるということであれば、その内容からチョイスしてお伝え出来ることはあります。

今回、参加させていただいた訓練、安置所はご遺族に優しい配慮がされていました。法医学教授曰く

「検視中の状況が直接家族の目に触れないように仕切りがあって、対面が出来るスペースを確保しています。」

訓練では、ながれがスムーズに行われることで、タイムロスがないことに私は驚きながら(家族が早く対面出来るなど)、検視終了後のご遺族の対面スペースが確保されていたこと。色々な部分で、様々に配慮がされている安置所の検視訓練エリア。法医学の教授が案内をして、説明してくださる内容に、私は震災当時を思い出し、全国各地の災害や大きな事故の発生後に伺う被災地での講演の時に聞かせていただく皆さんの経験を思い出し、何度も大きく頷いていました。

とにかく、レベルの高い訓練だったことは言うまでもなく、その配慮や采配も高度だったこと。

災害時の安置所は、警察管轄の公安のエリアなので公開されることもなく、公開されていないから知られることもなく、あまり人が意識していない場所ではあるのかなとは、思います。その安置所の中で御尽力されるプロの皆さんも、誰も亡くなって欲しくないと、みんな生きていて欲しいと思っています。しかしながら、亡くなられた方がいる限り、国の法律に従い安置所は設営され、検視が行われ、死因が特定され、出来る限り綺麗にしてもらい、沢山のプロの人たちにお世話になって、家族の元へ帰ります。

東日本大震災の安置所は、大規模災害だったので、家族を探す遺族の負担を出来るだけ抑えられるように、大きな建物が選ばれだそうです。その公安の管轄の安置所に、近隣の人たちが協力して下さり、近くのお花農家の皆さんは、亡き人へ供えてとお花を持って来て下さったりしていました。「今日もお母さんに、会いにきたの!」小学生の女の子が、そう私に声をかけた後、そのお花を持って、お母さんの棺の所に走って行く後ろ姿を見ていたあの時を、思い出しました。悲しみのあるときは、人のさり気ない優しさに支えられます。大きな悲しみを抱える安置所は、色々な人の優しさで包まれていました。

お世話になりました法医学の教授、諸先生方、岩手県警察本部の皆様、関係者皆さまに心より感謝を申し上げます。ありがとうございました。

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