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いのちの現場の言い伝え

ツバメを、あちこちで見かけるようになりました。いよいよ、夏到来ですかね。いや、まだ梅雨が来てなかった!

ツバメは、幸せを呼ぶ鳥の一種だと言われています。

特に暖かい時期の納棺の時間にも、ツバメをよく見かけます。

おじいちゃんを亡くしたお孫さんが、とても深い悲しみの中に居ました。納棺が終わって、お家を出ると、シュッとツバメが玄関に入って来ました。

昔から、亡くなった人が虫や鳥の体を借りて、お世話になった人たちに挨拶をしているという、日本の言い伝えがあります。

納棺終了後の時間の虫や鳥は、見守ることが多くあります。(お手当中の虫は、特に遺体に付いた虫は別です。駆除します)

ツバメが玄関から入って来て、それを見た大人の人たちが言いました。

「じいちゃんだ!」
「じいちゃんが来た!」

その言葉を聞いて、お孫さんが走って玄関まで来ました。

飛び回る、ツバメ。

さっきまで泣いていたお孫さんが言いました。

「じいちゃーん!・・・、じ・・・
じ、じいちゃん!動き速すぎる!」

悲しみの中ではありましたが、お孫さんの言葉に、みんな大笑いしました。

ツバメがおじいちゃんということよりも、亡くなった人が、おじいちゃんは何処にいるのかという明確な目的により昔の人はきっと、「亡き人のことを思ったら、いつでもどこでも一緒に居るんだよ」ということを、習わしが教えてくれているんじゃないかなと、私は思っています。

「蝶々が飛んで来てね、孫が会いに来てくれたと思ったんだ。」と、教えてくれたおじいちゃんがいました。蝶々が孫という感性から知り得ることは、おじいちゃんはいつも、お孫さんのことを想って過ごされていることがよく分かります。

「鳥が頭の上で鳴いて飛んで行ったよ。母さんが、またねって、言っているようだった。」と教えてくれた、息子さん。

「蛍が服に止まったんだ。娘が、少し甘えるために、私の服に休みに来たのかと思ったよ。」と、教えてくれた頑固と言われていたお父さん。

鳥や虫は、ご遺族の悲しみを支えてくれる、自然が持つ不思議な力だと思います。よって、悲しみを経験した人しか持ち得ない、感性なのかもしれません。目的が明確だから、感じ取れる感覚。悲しみを経験すると、道端に咲く雑草と呼ばれる花々も、愛おしくなるものです。ま、雑草と言っても、人間が勝手に雑草と言っているだけなので、雑草本人はそんなこと言われても気にしてないと思いますが。強く、のびのび、地に根を張ってしっかり立って生きてます。

ちなみに蛍は、その年に亡くなられた数と同じ数が発生すると昔から伝えられていて、夏のひと時だけ会いたい人に会いに来ると、言われています。東日本大震災が発生した年は、蛍が異常発生したのかと言われるほど多かったことは、有名な話です。

私たちが、自然の中に生きてることを意識させてくれるのは、見えていることを頭で理解していた通常から、見えているものの価値や意味、役割をそしてありのままのその存在の素晴らしさの感覚を心で感じる感性を、これまで気が付かなかったことを気付かせてくれたことは、悲しみという物の中にある深い部分に存在しているものだと思うから、

何より、故人が遺してくれた宝物の一つなのかもしれませんね。

風習や言い伝えには、根拠があります。潜在意識に触れる風習、日本にはそれを解説する、民族風習と呼ばれる学術が存在しています。現場で語り伝えているのは、むかし話を語れる人から、初めて悲しみに触れる人への口伝(くでん)です。文化は、そのように守られているのですね。

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