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現場の話し

納棺の現場にも、伺っています。ある現場でのこと。

〜心配なこと
私「お棺のふたを閉めさせていただきますが、直してあげたいところ、心配なことなどはありませんか?」

いつも、そのように伺います。

御遺族「えっと、うんっと」

80代くらいの男性が、何かをお話しされた時、奥さまかな?

「いいから!」と言いました。

私「良いですよ、大丈夫ですよ。何でもお話ししてみてくださいませんか?」

御遺族「あのね、心配なことはね、今日の寒波!どのくらい冷え込むんだろうと思って心配でした。」

みんな爆笑。ステキな発言に、涙は一旦どこかへ飛んでいきました。

私「あー!そうですよね。20年に一度の大寒波ですものね。暖かくしてお休みくださいね。」

大寒波の日の、納棺でした。

〜孤独死
孤独死も、とても増えています。一件一件の納棺、復元現場はとても切ないです。

様々な家庭環境もありますが、親より先に逝った子どもを迎えに来てくれる親御さんの愛情に直面すると、幸せに生きていたことを教えてもらいます。

現場にご縁をいただく私にとっては、目の前の深い愛情でつながれている親子の関係性、何があろうと子を守り続ける親心、それが何よりの報酬であり、その場にいさせてもらってお手伝いをさせていただくエネルギーになります。

御遺族と現場の後にもご縁が続くことが多くあります。

故人のお母さん「また、会える?」

私「もちろんです!」

電話のやりとりですが、続きます。そんなある日の電話。

故人のお母さん「とても寂しくなって、電話しちゃった!」

私「寂しくなったきっかけが、何かありましたか?」

故人のお母さん「あのね、毎朝ね、起きたらね、やっぱりお骨になってたの。毎朝、やっぱり本当のことなんだって、がっかりしてたの。」

私「そうでしたか。お母さん、眠れてますか?夢は見ない?同じご経験をされたお母さん方がね、子どもさんが夢に出て来て色々話したって教えてくれる人が多いんです。深く眠れる日に、会えるみたい。眠れてる?」

故人のお母さん「んー、眠りが浅い気がするんだ〜。起きがけに、足がつるの。日中も、足がつることが多くなったかなぁ。」

私「あれ、息子さんの部屋に「コブラ返しの薬」があったでしょ?持って帰った袋の中に、入ってたでしょ?飲んでみたら良いかも!」

故人のお母さん「あー、そうね!そうしてみる!親子だから、遺伝子でつながってるのは嬉しいけれど、コブラ返しではつながりたくないわ〜〜(笑)」

私「バナナも、良いみたいですよ。カリウムがたくさん入ってるタイミングとして、少し黒くなってきたバナナが一番良いみたい!」

故人のお母さん「あらやだ、ちょうどあるわ!黒いバナナ〜!」

数日後〜

故人のお母さん「もしもし?」

私「はぁい!」

故人のお母さん「あのね、変な人だと思わないでね、実はね、息子が居たのよ!!」

私「あらま!すごい!どんな感じで居ましたか?」

故人のお母さん「それがね、寝ている時に息子の声がしたの。

「母さん、ちゃんと布団掛けないと風邪ひくよ!」

って!えっ!ってびっくりして起き上がったら、人生で初めてベットから落ちたの(笑)娘に言ったら、

何言ってんの!じゃなくて、
何やってんの!だったから、それも嬉しかったんだよ〜(笑)」

私「寝ぞう、悪いんですか?(笑)」

故人のお母さん「うん、そうなの〜。あははは!」

それからしばらくして〜

故人のお母さん「もしもし〜〜?」

私「はぁい〜〜?」

故人のお母さん「49日が、終わりました。おかげさまでした。」

私「お疲れ様でした。一区切りですね。この後のことは、色々お話ししていきましょうね。」

故人のお母さん「うん!お寺さんにもね、色々聞いてもらって、わがまま1つ聞いてもらったの!」

私「あらぁ、どんなわがまま?」

故人のお母さん「あのね、息子ともう少し一緒に居たいから、お盆には納棺するので、お盆まで一緒に居て良いですか?って。」

私「どうでしたか?」

故人のお母さん「大丈夫ですよって、言ってもらったから、嬉しかった!!」

私「まぁ、なんてステキなお寺さんでしょうね!」

故人のお母さん「でしょう〜〜♬あの後ね、お骨になった息子を家に連れて帰ってきてね、毎日話し掛けてたの。何で、お母さんより先に逝っちゃったの?ってね。シクシク泣いてたの。でもね、最近はニュースを見たり社会の愚痴を語りながら、骨箱になっ?とか、おいっ!って、ツッコミ入れてる。(笑)」

故人が暮らしていたお部屋に一緒にお邪魔して、仕分けをお手伝いすることも増えました。疲れて倒れないように、体調のコントロールが目的です。

最愛のお子さんの遺品の全てが、親御さんにとっては宝物。だから、一生懸命です。疲れているのも忘れてしまうくらい集中されます。だから、傍に居る。やりたいことを止めません。でも、そろそろ休憩しませんか?とは、声を掛けます。

あの時、コーヒーが好きと伺ったので、お部屋の中での仕分けの後、美味しいコーヒーを出してくれる喫茶店へ行きました。

美味しい、美味しいって、立て続けに二杯のコーヒーを飲まれました。

「美味しいよ〜〜!」って、車の中でお留守番をしている、お骨になった息子さんに向かってお店の中からお母さん、手を振っていました。

毎日、たくさん現場があるけれど、同じ人も同じ家も1つもありません。目の前の人はみんな、世の中に一人しか居ません。

お母さんは、車に戻ると骨箱を抱きしめて乗っていました。

「シートベルト、息子と一緒にするんだもん!」

満面の笑みで、教えてくれました。

様々な種類のいのちの現場があります。生と死は一体です。先に亡くなった人は、死を経験したことのない私たちにとって、大先輩だと思います。

残される人も辛い。残して旅立つ人も、きっと辛い。そのお互いの気持ちをよく理解し合っているし、根本にあるその気持ちを親子として共有して、親子は今まで通りの親子という関係性の中で、日が経つに連れてさらに深い関係性になります。悲嘆は、人の心を深くするものだと、現場で教えてもらっています。

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