4.302018
じじ、85歳
【銭函】
ある日、仕事を終えて家に帰って来ると、じじが台所に立っていて、振り返り語り出しました。(父だけど、まるで母のような姿)
じじ「おれよ、今日よ、スーパー行って来たんだよな。でよ、納豆買おうと思った訳ね、手に取った納豆の、工場見た訳ね、そしたらさー、
銭函産だったの!(じじの故郷。じじは、元々、浜の男。小樽の隣に銭函という所がある。この地名は、鰊で栄えて、鰊御殿が沢山建ち、銭の箱が沢山あったから、「銭函」という地名になったらしい。)
その次に買ったさ、かりんとうも銭函産!(糖尿病なのにー!!かりんとう!買っちゃってるー!)
楽しそうに話すじいちゃん。北海道の故郷に、一旦帰りたくなったかな?と、ちょっと感じていた私。札幌に住む姉に電話して、じじの真意を聞いてもらうことにしました。
一緒に住んでいる私には、じじは弱みを見せません。家族間って、そうなのかも(笑)なので、離れて暮らす姉に、じじの寂しさを聞いてもらえるようにお願いしたのでした〜。
じじは心臓が弱く、足腰も弱いので、誰かが付いていかないとひとり旅は出来ません。これから、計画を立てる予定でーす。
【副葬品】
急遽、事情のある小さな子どもさんの復元の現場が入った。桜は、小さな子どもさんの納棺の依頼も、とても多い。
私「あのさ・・・」
時間がないことも含めて事情を話したら、じいちゃんはタオルなど、家にある物を色々準備してくれた。買い出し班と、準備班に別れた現場で、私は準備班。専門技術育成コース受講中の受講生も、桜の事務所で準備班に参加した。現場での時間は、大切なことに向き合う時間であるため、準備が如何に出来るかで、現場の進め方が大きく変わる。こちらの自分たちのことで時間を掛けるのは、以ての外と言うわけだから、準備が大事。
じじ「その子、じじの所に連れて来ても良いから。棺から出して、俺のベットで一緒に寝てやるから。火葬までずーっと話し掛けて、寝ないで撫でててやるからな。
あ、これ、持って行け!じじの宝物だから。」
手の平サイズの、干支のヘビのぬいぐるみ。なんとも派手!!副葬品が無かったので有り難かったけど、やっぱりちょっと、目立った。棺の足元に、入れた。
結果、連れて帰ることは無かったけれど、今までももちろん連れて帰ることは無いけれど、そう言う気持ちで居てくれるじじの気持ちに、いつも支えられている。
頭をもう少し安定させたいと思い、じじが準備してくれた袋を覗くと、じじの愛用の柔らかい素材の毛糸の帽子が入っていた。「あら、じじのお気に入りの帽子だ」枕の土台にすると、安定した。故人が気にいると、フィットすることは多いものだ。じじに、それを話した。
49日まで、遊びに来るかもしれないからと、じじの部屋には現在、駄菓子と小さなジュースが置いてある。
我が家では、誰も居ないのに小さな子どもの足音だけすることがよくあり(笑)、そういうことを全く信じなかったじじも、今となってはもう慣れたもんだ。
「いま、じじ、昼寝してますから、少しお静かにお願いします。」
と、走り回る音がすると言うことにしているらしい。(笑)
「うん、すぐ静かにしてくれるよ」
と、じじは語る。
年寄りというものは、こちらが気がつかない愛情表現を、色々教えてくれるものなんだと思う。じじは、私の心の師匠であることは、間違いないだろう。
【小さなじじ農園】
春には、プランターで花壇を作る。納棺の時、「花も野菜も作ったことのない人が、いのちを語るのはおかしい。」と、10年以上前に言われたことがある。確かに、その通りだと思った。なので、毎年、プランターの花と野菜を愛でる。じいちゃんと。
私も出張や、仕事で遅くなることが多いため、水やりが出来ないことが多く、じじが水やりをしてくれていることが多い。
昨年はゴーヤときゅうり、ミニトマトが大収穫だった。
「美味しく、いただきましたー!」と、知らない人から声をかけられることも多かった。
じじが、通りすがりの人に配りまくっていたらしい(笑)聞けば、
「おれ、高い所と低い所取れないから、収穫して持って行って〜♬」
と、じいちゃんから言われていたそうだ。
不思議なもので、じじが水やりをすると花や野菜がとても元気。私が水やりをすると、まぁ、普通。何が違うのか、じじに聞いてみた。
「水やりをする時な、褒めて、話し掛けてるの。」
なるほど!いのちを育むとは、そういうことだと思った。学んだ。
じじ「親は無くても、子は育つって言葉があるだろ?あれ、放っておけば勝手に育つってことじゃないんだぞ。つまり、親が気が付かないところで、誰かが子の面倒を見てくれているということことでな、人に世話になっていることに気が付かない人が使うことが多いからな、あの言葉だけは使わんでくれな。」
昔からの、じじの口癖だ。
年寄りのハートってすごいと思う、今日この頃でした。