10.252020
いのち輝かせて
「怪談研究クラブ」のシリーズ2冊目を発売して二週間が経ちました。反響が大きいです。
と言うのも、2冊目は東日本大震災の体験に触れ、当時の様々な話しを物語として組み込みました。
2冊目を出版するにあたり、釜石市、大槌町、山田町、宮古市に昨日、一昨日と関係者の皆さまのところを回って、無事に出版されたご挨拶に。
2冊目の内容の舞台は「宮古市」です。宮古市では、本に登場している施設長関口さん、魔法使いと妖怪の、のりっちとひかるさん、天女のぶ子と天女千春と会って来ました。みんな、東日本大震災で尽力された方々です。震災の、裏も表も知っている、そんな人たちばかりです。ですから、やはり震災当時の話しになり深い時間になりました。
のりっちが、面白い話しを教えてくれました。
「2冊目の怪談研究クラブが発売された後、
火葬場に馴染みのある一人暮らしのおばあさんが亡くなって、僕が火葬を担当したんです。
おばあさんはきっと、いつものように火葬場に遊びに来てくれてるのかなって思って過ごしていました。
そんな中なんと火葬場に、本の内容の通りに野良猫が住みつくようになったんです。
本の中では、おじいさんと野良猫の物語があったけど、
実際の火葬場では、おばあさんと野良猫かもしれない!そんな思いで過ごしていましたよ。」
偶然でも、なんとなく改めて生と死を考えさせられる話しでした。
のりっちとひかるさんは、私がうなるほどすごいと思う、火葬場の職人さんです。自分の仕事に誇りを持ち、亡き人と遺された家族を紡ぐために、日々探求しています。
すごいなと思ったのは、おばあさんを想い続けてくれていることと、野良猫を保護してくれていること。生と死の境目がなく、いのちを大事にしてくれていること。のりっちは、困った顔をしながら話してくれていましたが、それは、一つ一つのいのちを輝かせてくれている話のように、私には聞こえていました。
死に携わる仕事は、その人の生きた人生という生に携わること。のりっちとひかるさんの話は、いつもそのことを強く意識させてくれます。
東日本大震災から10年。この10年の、1日1日の積み重ねは、生きていることを強く意識して、亡き人と共に歩み過ごし、同じ思いの沢山の人たちとご縁をいただいた、そんな10年だったと思います。
お空に行った皆さんは、いま、何をしているのかな?皆さんはお空の上で、どんな10年目を過ごすのだろう。できることなら、私たちと一緒に過ごしてもらえると良いな。そんなことを思いながら、車窓から今は静かな海を眺めていました。